ノスタルジー千夜一夜

失敗と後悔と懺悔の記録(草野徹平日記)

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

別冊⑦(医療編)病名・ケイチツ炎?・・・不純な動機での入院

病名も、ネット上のニックネームも、名前は大切だ。・・・・・・・・・・・・・・ 「大腸のケイチツ炎が疑われます。すぐに入院して下さい。」 『えー! 入院は困ります。通院でどうにかなりませんか?』 「このままでは危険です!」医者は深刻な表情で私に…

別冊⑥(山行・教育編)竜王山・・・神との取引

イザナミの眠る山、比婆山。その近くにある竜王山の登頂に失敗し、深刻な事態となった。私は神に祈る以外、どうすることもできなかった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「先生、Tの様子がおかしいです。」部長のMが最後列から叫んだ。雪の中…

別冊⑤(山行編)独立峰大山・・・闇将棋

山は美しい、そして怖い。 不遜なものを拒む。・・・・・・・・・・・・・・・ 「4二銀」 『5六歩』「5四歩」 『5七金』「そんなとこに金があったか?」 『有りましたよ。』「うそー」 将棋盤も駒もないバーチャルな「闇将棋」はお互いの記憶力だけが頼り…

別冊④(山行編)パンスト初体験・・・未知との遭遇

異文化に接したとき、人は混乱する。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ パッケージから取り出すと、それは想像以上に薄かった。顔を近づけると向こうの景色が透けて見える。「こんなに薄くて、大丈夫かな?」初めて見るパンストを前に、私は考え込んでし…

別冊③(音楽編)虹の彼方に・・・旅立ったもの達へ

懐かしい曲を聴くと、懐かしい人を思い出す。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 新聞販売店近くの喫茶店で、私は就職して以来の出来事を話し続けた。二人の会話が途切れた時、店内に流れているメロディーがふと耳に入った。どこかで聴いた曲だ。いつど…

第40夜 「未来からの記憶」に導かれて(運命的な出会い)

アーサー・C・クラークのSF小説「地球幼年期の終わり」の中で、「未来からの記憶」という言葉が出てくる。私はこの言葉が好きだ。・・・・・・・・・・・・ 小説の中で、次のような内容が語られる。 ある日、宇宙人の乗った宇宙船が地球に着陸した。しかし、…

別冊②(恋愛編)ラブレター・・・借り物の自分を捨てる時

人生で一度だけ、ラブレターを書いた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「草野、この写真は使えない。」サークルの先輩が差し出した写真を見て、私は息が止まった。先日開かれた、各大学合唱団の合同クリスマス会での集合写真だ。整…

第39夜 シェヘラザードの悩み(エッセイを書く苦しみと楽しみ)・・・読んでもらえる文章を書く

シェヘラザードは王様に殺されないために、面白い話を千一夜話し聞かせて命が助かった。彼女が助かったのは、シンドバッドの冒険などの面白い話を沢山知っていたからだ。もし私のエッセイを聞かせていたら、話の途中で即座に王様に殺されていただろう。・・…

別冊①(料理編) 幻のブイヤベース(伝説のレシピはいかにして生まれたか)

その日、私たちが作った料理は「伝説」となった。

第38夜 マタイとヨハネと改名騒動(役所に見る国際化と鎖国)

日本の行政は非常に厳格だ。一方、最近のマイナンバーカードの登録に象徴されるように、怪しげな運用も多い。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「その名前はダメです。受け付けられません」窓口の担当者は冷たく言い放った…

第37夜 ジョーの思い出(大陸横断鉄道を作った曽祖父)・・・トロンコとジャケツの謎

昔から、我が家だけでしか通じない言葉がある。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 我が家の言葉は、他の家と少し違う。いろんな国の言葉が混じっている。私の肥後弁、妻の備後弁、息子の嫁は肥前の言葉だ。そして私が小さい頃からよく聞い…

第36夜 石鎚山(汚水で作るおいしいコーヒー)・・・古いガイドマップに騙されて

「空腹は、最高の調味料だ」と、誰かが言った。私が最高にうまいコーヒーを飲んだのは、石鎚山の岩場でだった。 ---------------------- 1985年の夏休み、私が勤務する高校の探検部は、四国の石鎚登山を計画した。私を含めた4名は誰…

第35夜 飛行機雲の向こう(叶わぬ夢)・・・父と見送った飛行機

飛行機は金属的なジェット音と共に加速し、目の前で離陸していく。そして腹に響く低い轟音を残して、遠くへと消えていった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高3の夏、私は航空大学校を受験するため宮崎に向かった。まだ受験する大学を最終決定…

第34夜 愛するものへ・・・ばあちゃん、僕、そして孫

消毒液の匂いの漂う病室で数十年ぶりに握ったばあちゃんの手は、野良仕事で鍛えた大きくしっかりとした手だった。この手で僕は育ててもらった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小さい頃、僕はいつもばあちゃんと一緒だった。忙しい両…