ノスタルジー千夜一夜

失敗と後悔と懺悔の記録(草野徹平日記)

別冊⑳(恋愛編) 恋のABC・・・自分の殻を破れ

自分を変えたい、新しい自分に生まれ変わりたいと思う事がよくある。 勇気を奮って一歩踏み出してはみるが、付け焼刃ではなかなかうまくいかない・・・ 大学1年の春、講義室で学科の友人達が「合ハイ」の話をしていた。昨今の「合コン」と違って、当時は合…

第54夜 ラグリマ(涙)・・・ギターとバイクの思い出

二学期の終業式の日だったろうか。生徒たちも帰宅して、久々にほっとした雰囲気が職員室に流れた。すきま風の吹き込む職員室で、私を含めた何人かの職員が、ストーブの周りでお茶を飲みながら話をしていた。すると一人が、「そうだKさん、ギターを弾いてよ」と…

第53夜 幸せな「夢」・・・勇気を振り絞って

赤いスーツを着た女性は、ステージ端に立ち報告を始めた。私は仕事で会場の設営に来ただけなのだが、仕方なくホール最前列の隅に座った。彼女は事件について報告し、「何らかの対処をしなければならない!」と強く訴えた。「意見を願います!」と再度呼びか…

別冊⑲(音楽編) ボーン神父(二つの生き方)

1978年1月、聖堂の中は寒かった。しかも、普段ですら多いとは言えない聴衆が、今日はことのほか少ない。7~8人ほどだろうか。広い聖堂がいよいよ寒々と感じられた。 つい二週間前には、ここでクリスマスミサが開かれたばかりだ。当日は沢山の参加者で…

別冊⑱(音楽編) 深夜のオルガン(二十歳の頃)

バイトが終わるのはいつも夜の12時過ぎだった。ボーイ用の蝶ネクタイを外し、ワイシャツの上にジャンパーを着ると、そのまま店の外にあるバイクにまたがった。 深夜にもかかわらずネオン街は明るく、酔客の喧噪に溢れている。店からバイクで15分も走れば…

第52夜 善と偽善の間で・・・ジャーニー氏、高須氏、私(ついでに指原さん)

先日、高須クリニック院長の高須氏が自家用ヘリに救援物資を積み込み、石川の被災地を訪問したとの書き込みを見た。彼は「今は被災地に行く時ではない。行くならば、衣食住の一切で自立して、現地の足を引っ張らない様にしろ」 と言っている。その言葉は至極当…

第51夜 行動する偽善者(被災地へ)・・・不真面目ボランティアの勧め

テレビ画面に映る能登の被災風景は、過去に何度も見た辛い景色だ。倒壊した家屋、津波に打ち上げられた車、行列に並ぶ被災者・・・それは大船渡や人吉の被災地で見た、そして熊本地震に見舞われた自分の街で体験した風景そのものだ。 (画像:NHKニュースよ…

別冊⑰(音楽編)「先生」・・・アルハンブラの思い出

大学2年の夏、私はナイトクラブでボーイのバイトを始めた。店は広島市の繁華街にある会員制の高級クラブで、ロングドレスを着た数名のホステスとマスター、そしてボーイが数名だけの落ち着いた雰囲気の店だった。室内には東郷青児の絵が何枚も飾ってあった…

第50夜 さようならSL

今日、18年ぶりに会った。そして、これが故郷で見る最後の姿となった。ホームを出発する汽車は、細く長く汽笛を鳴らして出て行った。まるで泣いているかのようだ。・・・・・・・・・・・・・ 高校時代、毎朝「一番汽車」で通った。当時すでに蒸気機関車(SL…

別冊⑯(家族編)父のくれた手袋

父は数年前に亡くなった。酒好きだった父のために仏壇に酒を供え、父といろんな話をする。 生前、父と私は会話の少ない親子だった。 亡くなってからの方が、会話が増えたかも知れない。今、とても父に会いたい。 ・・・・・・・・・・・・・ 「寒うなかか?…

別冊⑮(青春編)ヒーローへの憧れ・・・永遠の少年、両津勘吉

鉄人28号、鉄腕アトム、エイトマン、ビッグX、サイボーグ009・・・小学生の頃、私はアニメや漫画に夢中だった。当時はキング、サンデー、マガジンなどの漫画週刊誌が相次いで創刊された頃で、定価60円位だったろうか。菓子パンが30円くらいの時代に60円は…

別冊⑭(平和運動編)平和をどう作るか・・・知覧にて

特攻平和会館の展示物は、戦争の悲惨さを語るのか、それとも悲劇の英雄たちを称賛するのか、それを確かめたくて10年ぶりに知覧を訪れた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「軍備増強を!」 「敵基地への先制攻撃を!」ウクライナ侵攻以降、勇まし…

別冊⑬(平和運動編)知覧特攻平和会館での疑問・・・英霊達の憂い

あんまり緑が美しい。今日これから死にいくことすら忘れてしまいそうだ。真青な空 ぽかんと浮かぶ白い雲 6月の知覧はもうセミの声がして夏を思わせる。・・・・・・・・・・・・・・・・・ 先の文章は、22歳で特攻に飛び立った兵士が残した文章だ。初めて…

第49夜 花の下にて春死なん(理想の死に方を求めて)

五木の子守歌の後半の歌詞は、野垂れ死にの歌だ。それは私の望む死に方でもある。------------ おどんが うっちんねえば 道ばちゃ いけろ通る人ごち 花あぎゅい (私が死んだら 道端に埋めろ) (通る人ごとに 花を供えるだろう) 親父はこの歌…

第48夜 被爆の日に②・その後の少年達

(ジョー・オダネル氏撮影) 少年は涙を見せなかった。彼は泣かないほど、強かったのだろうか。それとも泣けないほど、多くのものを抱えていたのだろうか。 いろんな事を想像する。「家」に戻れば瀕死の家族がいて、泣いてる余裕もなく看病をしなければなら…

第47夜 被爆の日に①・戦場の子ども達

(山端庸介氏撮影) 何歳だろう。3,4歳くらいだろうか?顔中に傷を作り、防空ずきんの下には包帯のようなものも見える。大切なおにぎりを手に、無表情にカメラを見つめている。この幼い目は、被爆の地でどんな景色を見てきたのだろう。 80年代、被爆記録…

第46夜 2011年・被災地(東北)にて②・・・ボランティアの意味

被災地へ支援に行ったつもりだったのに、私は被災者に励まされて現地を発った。---------------- 最終日の作業はアパート室内の清掃だ。2階建ての建物はそんなに丈夫そうには見えないが、津波に見舞われながらもしっかりと建っていた。屋内…

第45夜 2011年・被災地(東北)にて①・・・悩み

宿舎に到着した晩、言われた言葉に自分を恥じた。「物見遊山で被災地に来ても構いません。現地に行けば、必ず『何かしたい』という気持になります」---------------- 今日の現場は前日に続いて、津波で浸水した家屋の泥出しだった。民家の庭…

別冊⑫(災害編)東日本大震災・・・孤独

2011年3月11日真っ黒な津波が、田園風景を吞み込みながら進んでいく。これまで確信していた「平和」が壊れた瞬間だった。・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4月下旬、その日の仕事は、大船渡市中心部の高台にある仮設住宅への支援物資の配達だった。各戸の…

第44夜 ビートルズの謎・・・アオナ ホー ヨー へー

昔、厚みがペラペラのフォノシート(レコード)があった。当時は、雑誌の通販で一枚100円以下で売っていたような記憶がある。・・・・・・・・・・・・・・・ 小学生の頃、我が家にはレコードプレーヤーが無かった。近所のお姉さんの家には有ったので、お姉さ…

別冊⑪(教育編)でもしか教師・・・教育におけるヤブ医者

教師は「医者で易者で役者でなければならない」と教わった。 人の課題を見抜き、進むべき道を示して励ませと言う意味だろう。 だが私はヤブ医者で、当たらぬ易者だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 呼ばれて校長室に入ると、教頭が一人ソファーに座っ…

別冊⑩(バイク・家族編)メグロS7・・・千羽鶴の遺灰との旅

我が家には錆だらけのオートバイがある。最後にエンジンをかけて以来、数十年も軒下で寝ている。でも、捨てられない。・・・・・・・・・・・・・・・ ライトに照らし出され、海の中に鳥居が赤く浮かび上がっている。夜の海辺には観光客の姿は無く、波音だけ…

第43夜 カワサキW1SA(バーチカルツインの響き)・・・「三番目」の逆襲

マルチエンジンの様に紳士的ではない。しかし、ハーレーの様に暴力的でもない。無骨だが人間的な温かみを感じさせるその排気音に、私は魅せられた。・・・・・・・・・・・・・・・ 燃料コックを開き、キャブレターに付けられたティクラーを押して、ややオー…

別冊⑨(音楽編)Danny Boy・・・我が子を待ちわびる

「ダニー・ボーイ」は、戦地に行った息子の帰りを待つ、父親の気持ちを歌ったものだと聞く。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「女将さん、曲名は何?」『何とかボーイ、ボニーだったかな?』少し酔ったかに見える女将は、はっきりとしない。「マイボニ…

第42夜 学校の怪談・・・深夜の残業

私は夜の学校が嫌いだ。誰もいないはずなのに、誰かがいるような気がしてしようがない。・・・・・・・・・・・・・・・ これまで私が勤務してきた学校は、比較的郊外にあるものが多かった。 そしてそんな学校の中には、古い墓場や火葬場の跡地を整地して作…

第41夜 ヒッチハイクは命懸け・・・夜の山道で

「何の用だ!」 野太い声を出しながら、ドアから大柄な運転手が降りてきた。見ると彼の手には、鉄パイプが握られている。私は、しまったと思った。・・・・・・・・・・・・・・・・・ 仕事のため熊本市方面へ向けて車を走らせていた。すると、「熊本市」と…

別冊⑧(医療編)世界一短い病名

何となく、他人に言い辛い病名が有る。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 憩室炎で入院した翌年の夏、私の身体はまたも重大な事態に見舞われた。便が出ない。元々便秘気味ではあったが、まったく出ない状態となった。「そのうち…

別冊⑦(医療編)病名・ケイチツ炎?・・・不純な動機での入院

病名も、ネット上のニックネームも、名前は大切だ。・・・・・・・・・・・・・・ 「大腸のケイチツ炎が疑われます。すぐに入院して下さい。」 『えー! 入院は困ります。通院でどうにかなりませんか?』 「このままでは危険です!」医者は深刻な表情で私に…

別冊⑥(山行・教育編)竜王山・・・神との取引

イザナミの眠る山、比婆山。その近くにある竜王山の登頂に失敗し、深刻な事態となった。私は神に祈る以外、どうすることもできなかった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「先生、Tの様子がおかしいです。」部長のMが最後列から叫んだ。雪の中…

別冊⑤(山行編)独立峰大山・・・闇将棋

山は美しい、そして怖い。 不遜なものを拒む。・・・・・・・・・・・・・・・ 「4二銀」 『5六歩』「5四歩」 『5七金』「そんなとこに金があったか?」 『有りましたよ。』「うそー」 将棋盤も駒もないバーチャルな「闇将棋」はお互いの記憶力だけが頼り…