ノスタルジー千夜一夜

失敗と後悔と懺悔の記録(草野徹平日記)

第44夜 ビートルズの謎・・・アオナ ホー ヨー へー

昔、厚みがペラペラのフォノシート(レコード)があった。
当時は、雑誌の通販で一枚100円以下で売っていたような記憶がある。
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小学生の頃、我が家にはレコードプレーヤーが無かった。
近所のお姉さんの家には有ったので、お姉さんの留守中におばちゃんの許可をもらって、よく聴かしてもらった。
プレスリーやシナトラなど古い曲が多く、レコードは全部フォノシートだった。


やがてテレビでビートルズベンチャーズの曲がよく流れるようになった。
モンキーズのコメディドラマもよく見た。
英語の意味は分からないままに、聞きとった歌詞をまねて歌った。
だがビートルズを真似て「アオナ ホー ヨー ヘー」と歌うと友人たちに笑われ、それから人前では歌わなくなった。


「アオナ・・」の文字も意味も分からず歌っていた私が、その意味を知ったのは中学生になってからだ。
 I wanna hold your hand
(歌の題名は I want to hold your hand)
同じ意味なのに題名と歌詞は違った。
また、学校で習った発音がビートルズの発音とあまりにも違っていて、英語は難しいと思った。
もともとローマ字が苦手だったこともあり、英語は嫌いになった。


その後、学生時代を通じてずっと英語は苦手だったが、社会人になり職場でALT(英語指導の外国人教師)と酒を飲むようになって、英会話が楽しくなった。
私の英語は文法も発音も滅茶苦茶だが、何とか彼らに通じた。
世界が広がった気がして、積極的に会話(半分以上はボディランゲージ)をするようになった。
英文を読むのは嫌いだが、会話は楽しくなった。


我が家には、ボロボロの英会話の本がある。
明治時代中期、私の曽祖父がアメリカに出稼ぎに行く時に使ったものだ。
英文と日本文の間に、英語の発音がカタカナで振られている。
それは私が学校教育で習った発音とはかなり違った。
私は「昔は英語の発音がよく分からなかったんだろう」と思って、古い本を馬鹿にしていた。
だが実際にアメリカ人と会話をすると、中学校で習った発音よりも、明治の本の発音の方が近い。
そしてそれは、私が歌で憶えた「アオナ…」に近いと気づいた。
明治の会話教本や歌で聞き憶えた発音の方が、今の英語の教科書よりも会話としては優れていると思う。


私は小さい頃に見たドラマに影響されて、弁護士に憧れていた。
だが英語が苦手なため、文系はだめだと早々に諦めた。
高校三年の時には航空大学校を受験したが、これまた英語ができなくて見事に落ちた。
もし英語が得意だったら、私の人生は変わっていたかも知れない。

あのまま英語の歌を歌っていれば、きっと今頃は英語がペラペラで、そうしたら航空大学校にも合格し、金髪美人のスチュワーデスを奥さんに・・・


私の妄想は、限りなく膨らむ。
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