赤いスーツを着た女性は、ステージ端に立ち報告を始めた。
私は仕事で会場の設営に来ただけなのだが、仕方なくホール最前列の隅に座った。
彼女は事件について報告し、「何らかの対処をしなければならない!」と強く訴えた。
「意見を願います!」と再度呼びかけるが、会場からは何の反応もない。
(写真提供:PAKUTASO)
改めて周りを見回すと、ここは国会だった。
そして、彼女はなぜか捜査担当の検事だ。
どうやら検事は、議員の犯罪についての捜査報告を行い、国会の改善を求めているようだ。
だが会場から一切声は無く、見れば議長はステージ中央の席で居眠りをしている。
「このままでは、日本はダメになります!」
検事はそう言うと、その場に泣き崩れた。
私は、このまま何の意見も無く審議が終われば、本当に日本はダメになると思った。
何とかしなければと思うが、部外者の自分が発言するわけにもいかない。
どうしようかと迷いながらも、
「国民にも言う権利はある!」と思い直し、勇気を出して手を挙げた。
「議長!」
私の声と重なって、中央の最前列に座る人間も声を上げた。
それは、いつもよくテレビに出てくる、私の嫌いな議員だ。
議長は彼を指名した。
その議員は、さすがに今回の事件はひどいと思ったのか、是非改善すべきだとの意見を述べ始めた。
私はそれを聞いて嬉しくなった。
すると、会場のあちこちから手が挙がるようになり、様々な人間が前に進み出てマイクの前で演説を始めた。
中にはどうしようもない意見を言うものもいたが、会場は「国を変えよう」との熱気に溢れた。
私は議論が続く国会をそっと抜け出した。
嬉しい気持ちの私の耳に、
「もう一人最初に手を挙げた、あの人間は誰だ?」という声が中から聞こえてきた。
勇気を振り絞って手を上げてよかったと思った。
外は爽快な青空だ。
そして私は目が覚めた。
とても幸せな気持ちで、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
「夢だったのか・・・」
幸せな夢を見て目が覚めるなんてことは、とても久しぶりだ。
一昨日から昨日にかけて激務が続き、一昨日の睡眠時間は2時間ほどだった。
さすがに昨晩は早めにベッドに入り、おかげで今朝はすっきりと目が覚めた。
私は、夢とは言え勇気を出して発言した自分を誇らしく思いながら、余韻に浸っていた。
だが、次第に目が覚めてくると気持ちが変わってきた。
「夢だったのか・・・」